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2018年02月05日(月)

日中翻訳の意外な落とし穴(慣用表現編)

日本語では、空調は吹出口から空気を吹き出し、吸込口から空気を吸い込むと表現します。

以前にも書いたように、日本語の漢字をできる限り訳に持ってくるのが日中翻訳の主流であるため、この「吹出口/吸込口」も基本的にそのまま「吹出口/吸入口」と訳されています。

そういう呼び方は聞いたことがないと思って調べたら、どうやら中国語では「送风口/回风口」(送風口/回風口)と呼ばれているようです。「吹出口/吸込口」は日本語では慣れ親しんだ表現だと思いますが、生粋な中国語表現ではありません。「吹出口/吸込口」は技術用語というよりは慣用表現に近いです。そのためか、この類の表現は、日中辞典によっては載っていなかったり、載っていても辞書によって違ったり実際にその分野の技術文章に使われていなかったりすることもあるため、上記のように一般的に既に定着した呼称とは別の表現を作り出さないようにする注意が必要です。

用語の調べ方についてはここに収まりきらないほどネタがあるので、また次回以降書きたいと思います。

翻訳時に注意が必要な慣用表現は他にもたくさんあります。当たり前のことですが、文化や習慣、感性の違いから、国によって表現の仕方などが違ったりします。

例えば、人民元20元紙幣の色を茶色と表現する明細書があって、それをそのまま「茶色」と中国語に訳した人がいます。しかし、人民元の色について中国では「茶色」とは別の既に定着した呼び方がありました。それは「棕色」(ブラウン)です。もちろん「茶色」でも間違いとはいえませんが、中国語としてはいささか不適切です。

また、一般翻訳の話になりますが、例えば、「xxポテトチップス 塩味」の「塩味」をそのまま「盐味」(塩味)と訳したらどういう印象を与えると思いますか?
日本では馴染み深いネーミングですが、中国ではそのネーミングはありません。どのフレーバーにも塩は入っているはずだから、塩味といわれてもピンとこないので、普通「原味」(プレーン味)といいます。ちなみに、中国の場合、とにかく名前を一捻り、二捻りしたほうがおいしく感じるので(フレーバーの種類も日本より豊富)、例えば、「泰式咖喱蟹味」(タイ風蟹カレー味)、「清爽酸奶味」(さっぱりヨーグルト味)、「香脆烤鸡翅味」(香ばしくてサクサクの手羽焼き味)のようなネーミングが一般的です。

また、例えば、日本でキャッチフレーズとして「愛され続けて○十年。」という決まり文句がよく用いられますが、中国では全く馴染みのない表現です。そのまま訳しても、キョトンとさせるだけです。ここは、うちの商品は○十年も売れ続けるほどの人気商品ですとはっきりさせたほうが、観光客にもその言わんとすることが伝わるのでしょう。

以上のような慣用表現は、文字通り翻訳しても間違いにはなりませんから、本当はどう訳そうと翻訳者の自由です。ただ、さじ加減一つで、違和感が生じたり、伝わりにくくなったりする可能性があることも忘れないでほしいです。


カテゴリー:翻訳の仕事

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