「特許翻訳」「知財翻訳」で多くの方が思い浮かべるのはやはり「特許出願明細書の翻訳」ですね。ですが実は特許の世界では出願明細書以外にも沢山の翻訳が必要な文書があります。今日はそんな様々な形の特許翻訳について魅力や勉強方法も含めてお伝えします。

私が解説します

S.R. |特許翻訳・チェッカー・コーディネーター

新卒でAIBSに入社し、当時立ち上げ間もない特許部門で特許翻訳・特許調査・解析・特許事務所様での外国事務など多岐にわたって学びました。現在は特許翻訳チームにて翻訳・チェック・コーディネート・セミナー企画・IT活用・ワークフロー改善業務を主に担当しています。言語のピース、文書のピース、意見や思いのピースがハマって前に進む感触が好きで、日々訳したり整えたり書いたり話したりしています。
【資格】知的財産翻訳検定1級(知財法務実務/英訳)、知的財産管理技能士検定2級、実用英語技能検定1級

特許翻訳のいろんな文書たち

はじめに、私が触れてきた国内クライアント案件の書類を一部ご紹介します。

分類書類例書き手読み手
代理人レター受領レター海外代理人出願人/国内代理人
発送レター出願人/国内代理人海外代理人
中間書類庁書類(拒絶理由通知書等)特許庁出願人/代理人
応答書類(補正書、意見書等)出願人/代理人特許庁
係争書類訴状原告裁判官/被告
答弁書類原告/被告裁判官
審決裁判官原告/被告
契約書類委任状出願人代理人
ライセンス契約書ライセンサーライセンシー
教育・広報書類知財業務マニュアル国内知財部海外拠点知財部
知財ニュースレターニュース情報発信者ニュース情報収集者
IR書類企業株主、投資家

いかがでしょう?一部だけでも結構ありますね。

最後のIR書類は2021年6月のコーポレートガバナンス・コード改訂以降、知財への取り組みに関する情報開示が求められるようになりIR翻訳と知財翻訳、双方のノウハウがある翻訳者や翻訳会社のニーズも高まっているのではないでしょうか

こんな色々な書類たち、個人的に感じている魅力は「ヒト対ヒト」の文献なこと。

出願明細書は環境や既存発明と出願発明との対比といういわば「モノ対モノ」の話ですが、出願人と審査官、請求人と被請求人など人をより意識した文書は文系出身でディベータブルな世界が好きな人には合っていると思います(執筆者は法廷モノのエンタメ作品が好き)。

できる特許翻訳者が意識しているポイント

1. 出願・審査・審判の流れを把握する

出願・審査・審判の流れどこで文書が発生するのかは押さえておきたいポイントです。
出願明細書とは違って書き手や読み手が一つに決まっていないので「どの時点で、誰が、誰に対して、何をしたくて作成する書類なのか」を翻訳時に意識できているとできていないとでは原文の解像度・訳文のハマり具合も変わってきます。

特許取得までの流れと発生書類

特許取得の流れと発生書類をまとめてみました。
画像をクリックすると拡大できます

2. 定型句を習得する

法律・法務的な記載には頻出用語や定型句が多くあります。それらを学習しツール化(用語集化・翻訳メモリ化・上書き翻訳マクロ化など)すると効率的です。特に係争文書などは一文がとても長いので、定型句をツール化すると実際の記載有無にかかわらず文中の鉤括弧の存在が分かりやすくなります

日本知的財産翻訳協会が実施している知的財産翻訳検定の知財法務実務分野の過去問と参考解答例を対訳研究してみるのも良いと思います。

3. 過去文書をメモリ化する

発明発掘から権利活用まで一つの特許出願には長い期間をかけて沢山の書類が作成されます。その間に過去文書から不必要に訳語を変更することは混乱を招きます(補正クレームの翻訳で補正箇所以外の不必要な変更、係争書類の中の明細書を参照する部分で全くの新規訳出など、考えるだけでオソロシイ……)。

翻訳者は「自分にとっての100点でなく、この文書がおかれた流れの中での100点」を目指さなければいけません。そのため、例えば翻訳支援ツールに過去文書の対訳を翻訳メモリとして設定するなど過去の表現を参照できる環境設定が重要です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。日々多様な文書の翻訳に追われる方にとって情報整理の機会になれば嬉しく思います。

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不必要な拒絶対応を減らして現地代理人の工数を抑制することがトータルコストの削減につながります。

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