特許サーチャーのYです。

現在放送されているドラマ「それってパクリじゃないですか?
皆さんはご覧になられたでしょうか。

このドラマは、現代社会において問題視されている著作権侵害や模倣の問題に焦点を当てた知的財産エンタメドラマとなっています。
「知財初心者の新米知財部員」と「知財のプロである弁理士」が企業の知財トラブルに立ち向かうお仕事系ドラマです。

私は以前にメーカーの知財部で仕事をしていましたので、この業界をよく知っている知財部員の目線で観ています。しかし、一般的にはかなりマイナーな世界ではないでしょうか。

「知財部員」や「弁理士」という職種だけでもその仕事内容を知らない方はまだまだ多いのではないかと思います。しかしこのドラマは更に、主人公の一人が「企業内弁理士」という企業の知財部に在席する弁理士なのです。

少し驚きました。
これまでも知的財産が扱われる映画やドラマはありましたが、これらは内容的に盛り上がる法廷でのバトルが見せ所となっていて、その場での主役は弁護士であったと思います。
それがこのドラマでは弁理士、それも企業内弁理士です。見せ所はいったいどこになるのか。
このドラマによって私が身を置く知財業界が多くの人に知って貰える。そんな嬉しさを半分持ちつつも、一般的な視聴者がどう受け入れるのか不安でもある、というのが正直なところ。

そんな気持ちも持ちつつドラマを観た元知財部員の私ですが、このドラマを観て思い出したことがあります。それは、まだ好青年であった頃の私が弁理士を目指してゼミに通い始めたときの澄んだ眼で見た特許法に抱いた「特許法って素晴らしい!」という思いでした。

グルングルンに捻れあげた現在の私からは、そんな気持ちが何処に行ってしまったのか皆目見当も付かないという状態でした。しかし、このドラマを観て私の頭の中に以下の条文がChatGPTのプロンプトが如く現れました。

特許法 第一条 
この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与することを目的とする。

法律に気持ちは関係ない、と思うかもしれませんが、特許法の第一条では「パクられると開発のモチベ下がるよね。開発するの止めよ。」という気持ちを救うことを目的として記載しているのです。この気持ちを救うことができなければ開発することを止めてしまい産業が発達しなくなるからです。素晴らしい!って思いませんか?

ネタバレしてしまうのでほどほどに記載しますが、
ドラマの第1話では技術をパクられて出願され、第2話では商品を悪意無くパロディ化されてしまう、という話となっています。これに対して主人公の二人は、開発してきた人の技術や商品に対する思いを救うために知財の知識を活用して立ち向かっていくというストーリーになっています。開発者の気持ちにクローズアップされていると私は感じました。

私は知財の業務をしていますが、日々の仕事に追われて「開発者の気持ちを救う」のが知財の仕事だということを忘れていましたが、ドラマを観てそれを思い出しました。

とまぁマイナーな目線での感想を書いてしまいましたが、このドラマの中では「特許は言葉の陣取り合戦」や「屁理屈も立派な理屈」、「できる限りとできうる限り」と言った分かりやすい名セリフがあります。この名セリフには「そうです。そうです。」と共感すると共に、知財を知らない人に知財教育する際に「使える!」と思えるものが多く、私も新入社員研修の中で使わせていただいた言葉もあります。

知財リテラシー向上のために、知財に興味を持って分かりやすく知ってもらうには良いドラマだと思います。

映画館に映画を観に行くと本編の直前に上映されるCM「NO MORE 映画泥棒」。日本民間放送連盟が動画の違法アップロードの撲滅のために作成されている「違法だよ!あげるくん」は、子供たちにも広く認知されているようですが、このドラマもそんな位置付けになることに期待しつつ今後の展開を楽しみに観たいと思います。